【第一章、自分の周りも幸せになるには】
◯自分が楽しくないと、まわりも幸せにできない
いま、わたしが代表を務めるスプリングでは、事業の柱のひとつとして、インド伝 統の手刺繍やビーズワークを活かしたアクセサリーブランド「MAYGLOBE by Tribaluxe」(メイグローブ バイ トライバラクス)を展開しています。
どの商品もインド独自のデザインを取り入れながら、日本の女性が可愛いと感じられるような、日本のトレンドを押さえた繊細でオリジナリティあふれるアクセサリーです。
それまで、これといって目立った産業のないインドの小さな村の女性たちが手に職をつけることで、自立の機会を与えているとの評価を得て、おかげさまで商品のクオリティーだけでなく、SDGsなどの言葉が広がるなか、エシカルなアクセサリーブランドという文脈で評価をしてくださる方が増えてきたのは、本当にありがたいことです。
「MAYGLOBE by Tribaluxe」のアクセサリーは、インドの大都市・デリーから車で2時間ほど行った北部にある、伝統工芸技術を受け継いできた村々との協働でつくられています。
刺繍が得意な村、編み物が得意な村というように、それぞれの村に代々伝わる伝統工芸の技を活かして、当社でデザインしたものを手先が器用で技術のある職人たちが丁寧に一つひとつ手づくりします。
一般的な金属をベースにするのではなく、生地を使っているため軽くて着け心地がいいこのアクセサリーは多くの人に好評をいただいていますが、2004年にわたしがはじめてインドを訪れて以来、ここまでのブランドに育て上げる道はとても険しいものでした。
わたしがインドでアクセサリーをつくることを考えたのには、いくつかの理由があります。
まずわたし自身が、もともとアジアの民族系ファッションが好きだったのです。 家業を手伝っているときから、シンガポールやタイやマレーシアからファッション アイテムをよく仕入れていました。
このとき、インド産の刺繍アイテムやガラスビーズなども扱った経験から、「イ ンドのアイテムは技術もあって、ユニークなものがあるな」と常々、感じていたのです。
そしていつの日か、日本のファッションに感度が鋭い女性たちが、納得して着けられるインドのアクセサリーをつくりたいと思うようになっていました。
なにより、わたし自身がそんなアクセサリーがほしかったのです。
「ならば、自分でつくってしまおう」
そうして、いわば自分が楽しむために、ほかのどこにもない質の高いオリジナルのアクセサリーをつくることを思い立ちました。
最初の原点が、「自分が楽しむ」ということだったのがうまくいった秘訣だと思います。
他人を幸せにしたいとか、他人にいい格好をしたいとか、他人を行動の動機づけにしてはじめたことは長続きしないし、うまくいかないように思います。
なぜなら、まさにその他人の力を借りないと、ものごとを成し遂げることはできないからです。
自分でなんでもできる人だったら違うのかもしれませんが、少なくともわたしひとりの力なんて微々たるもので、まわりの人間の力に頼らないとなにもできません。
だからこそ、相手も同じように「楽しそう」「やってみたい」と本気で思ってもらうことが大切です。
自分が心の底から「楽しい」「やりたい」と思ってもいないことを、相手に「楽しい」「やりたい」と思ってもらうのは難しいのではないでしょうか。
これができたらこんなすごいことができる、こんな楽しいことになるということ を、心から相手に伝えてはじめて、相手も一緒になって協力してくれて、ものごとは うまくいくはずです。
そのため、わたしの行動の基準はいつも「自分が楽しいと思えるかどうか」にあります。