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0-2.半径1メートルのSDGsがちょうどいい

兵庫県神戸市の三宮の高架下にあった、広さ1坪程度のパンスト店の長女として生まれたわたしには、コネもお金もありませんでした。ビジネスのアイデアが次々と湧き出てくるような、優秀な頭脳も持ち合わせていません。いわゆる、エリート街道とはあまりにかけ離れた世界です。


大学を卒業して23歳で結婚。娘をひとり授かるも、労働意欲に乏しい夫に嫌気がさして、 歳のときには離婚を経験しました。シングルマザーになり、やむなく実家に出戻ったわたしは、家業を立て直す手伝いをはじめます。
そしてわずかなお金が貯まったタイミングで一念発起し、自分で事業をはじめたのが25年前のことでした。


そんなわたしは、自分でもあきれるほど「怖がり」で、情けなくなるくらいに悲観的でヨワヨワな人間です。でも、怖がりだからこそ、勝機のまるでないギャンブルのようなビジネスをして大失敗することもなく、ここまで無事にやってこられたような気もします。
子どものことを思えば離婚もしたくなかったけれど、あのまま結婚生活を送っていたら自分にも娘にもいいことは起きなかったでしょう。
あらためてこれまでを振り返れば、ただ自分が「やりたい」と信じたことを、愚直にやり続けてきた半生でした。
自分の「思い」だけで生きてきた――。だからこそ、
「誰だって『思い』さえあれば、やりたいことは全部できる」。
そう、わたしは確信しています。


また、自分の工場があるインドの村で健康診断を実施したり、雇用を守るために新しい商品を開発したり、環境に配慮してリサイクルのアクセサリーをつくったりと、世間から見ると社会貢献と呼ばれるようなこともしていますが、わたしは社会貢献活動家でも慈善事業家でもありません。
重要なのは、あくまでもビジネスがベースにあるということです。
自己犠牲とか、マザーテレサ的な愛と献身的な精神とはかけ離れていて、だからこそ結果として、インドのスタッフたちとウィンウィンの関係を築くことができたのでしょう。


そもそもインドの小さな村でビジネスを展開しはじめたのは、「インドの伝統的な刺繍の技術を活かした商品を開発する」「いままでにないオリジナリティあふれるアクセサリーをつくる」というプロジェクトの基本コンセプトが頭に浮かび、その対価として現地スタッフには仕事とお金をちゃんと与えるという思いがあったからです。
ただ不思議なのは、「やりたいこと、全部やりたい」という気持ちで生きていると、 必ずまわりにはたくさんの人が集まってきます。


まわりの人が楽しそうでなかったら、自分だって楽しくありません。すると、「どうにかみんなが笑顔で、できるだけ楽しい生活が送ることができたらいいな」という 気持ちになっていきます。
その笑顔を増やしたいからこそ、いろいろな企業とコラボレートしたり、新しいことをはじめたりしているのが実情なのだと思います。


正直、いまのわたしが、インドの貧困問題を解決しようと立ち上がったところで、 なにもできません。
でも、「やりたい」という気持ちは、「できるかも」という可能性を持った気持ちから生まれることも知っています。
「やれたらいいな」では、なにも変わりません。「できるかも」がいつしか、「やりたい」となる。
そして、前に進むために行動して、はじめてなにかが変わりはじめるのです。


「半径1メートルのSDGs(エスディージーズ :持続可能な開発目標)」
そんな思いを持ちながら、自分のできることでまわりのみんなを「なんとかしたい」「ポジティブに変えていきたい」と行動することが大切なのだと思います。